首都圏のJRや大手私鉄では、Suica(スイカ)やPASMO(パスモ)などの交通系ICカードの利用率が9割を超えている。そんな中、東急電鉄は2023年夏からVisaなどのクレジットカードでタッチするだけで電車に乗れる実証実験を始めると発表した。交通系ICカードでは難しい柔軟割引で落ち込む移動需要を喚起する。

クレジットカードのタッチ乗車を導入した泉北高速鉄道和泉中央駅(大阪府和泉市)の自動改札機
クレジットカードを使った乗車システムは世界の580を超える都市で導入されており、日本では米ビザと三井住友カードが普及の旗振り役となっている。20年から各地で実証実験が続けられているが、ほとんどは地方の鉄道会社やバス会社で、特に空港連絡バスや観光地の路線が多かった。
理由は2つある。
1つは交通系ICカードよりも投資コストが少なくて済むチケットレスサービスとして期待されているからだ。交通系ICカードはフェリカという日本の独自規格で、運賃計算などのシステムも自前で持つ必要がある。一方、クレジットカードのタッチ乗車は世界共通なので読み取り機は安く、決済システムも新たに用意する必要がない。投資余力に乏しく、キャッシュレス化が進まない中小の交通事業者の目には魅力的に映る。(参考記事:JR九州も実験開始 地方交通で「Visaタッチ決済」が広がるワケ
もう1つはインバウンド(訪日観光客)対応だ。海外発行のクレジットカードがそのまま使えるため、わざわざ独自のICカードを購入したり、現金で支払ったりする煩わしさがなくなる。交通事業者にとっても、駅員や乗務員が慣れない外国語で応対する負担が軽減される。空港連絡バスや観光地の路線で実証実験が進むのは、こうした背景が大きい。
しかし東急電鉄はそのどちらにも当てはまらない。既にPASMOが導入されているし、空港にアクセスする路線でもない。渋谷と横浜を除けば目立った観光スポットもなく、乗客の多くは沿線住民だ。なぜあえてクレジットカードのタッチ乗車の導入に踏み切るのか。
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