楽天モバイルが2020年4月より、月額2980円で自社エリア内では使い放題となる「Rakuten UN-LIMIT」を引っ提げて本格サービスを展開したことで、ここ半年のうちに低価格のモバイル通信サービスを提供する企業やブランドによる争いが激しくなってきたように感じます。
実際、楽天モバイルの本格サービス開始に対抗する形で、UQコミュニケーションズの「UQ mobile」は2020年6月より、Rakuten UN-LIMITと同じ月額2980円でデータ通信量が10GB、かつそれを超過しても最大1Mbpsでの通信が可能な「スマホプランR」の提供を開始。ワイモバイルもそれに対抗する形で、スマホプランRと同じ内容ながら、10分間の通話定額がセットで月額3680円となる「スマホベーシックプランM」などを提供開始しています。
しかもKDDIは、2020年10月にUQ mobileの事業を承継することも発表、中途半端な位置付けだったUQ mobileを正式なサブブランドと位置付け、低価格帯の競争力強化を打ち出しています。それゆえ携帯大手同士による低価格帯の競争は今後一層激しくなりそうな雰囲気ですが、そのことで存在感を失っているのがMVNOです。
かつてモバイル通信サービスの価格破壊を起こして勢いに乗っていたMVNOですが、その後携帯大手のサブブランドによる攻勢に遭い、さらにMVNO最大手だった楽天モバイルが携帯電話会社に移行したことで、存在感を失い低迷が続いているのが現状です。
実際、MVNOの大手の一角を占めるインターネットイニシアティブ(IIJ)は、2020年8月7日に実施した決算説明会で、同社の個人向けサービス「IIJmio」の2020年4〜6月期における契約数が106.3万回線と、前四半期(107.5万回線)から大きく減少していることを明らかにしています。同社はその要因について、コロナ禍で首都圏などの量販店が休業し、販売不振となったことが影響していると説明していましたが、それ以前から契約数は伸び悩んでいただけに、やはりサブブランドなどの攻勢で不調が続いている様子を見て取ることができます。
ですがここ最近の動向を見ていますと、MVNOを取り巻く環境にいくつかの変化が起きており、それがMVNOの競争環境を大きく変えることにつながる可能性が出てきているようです。
それを知るためにはまず、MVNOが携帯電話会社から回線を借りる時の料金の仕組みを説明しておく必要があるでしょう。というのもMVNOが回線を借りる時の料金計算の仕組みは、音声通話とデータ通信とで違っているのです。
音声通話はMVNO側が接続するための設備を持たないことから、携帯電話会社と直接取引する「卸」で料金が決まる仕組みとなっています。ですがデータ通信に関しては、多くのMVNOが携帯電話会社と接続するための機器を持っていることから、通信会社同士の接続を担保する「事業者間接続」という仕組みが用いられ、電気通信事業法で決められた算定方式で計算がなされた「接続料」によって毎年料金が決められているのです。
要は音声通話は携帯電話会社との交渉によって、データ通信は法律で定められた方法に則って料金が決められているわけなのですが、ここ最近その2つの料金に大きな変化が起きているのです。なかでも音声通話の料金変化を示したのが、日本通信が2020年7月15日に打ち出した「合理的かけほプラン」です。
これは月額2480円でデータ通信量が3GB、かつ音声通話が使い放題になるというもの。従来、MVNOの音声通話を定額で利用するには専用のアプリを用いるなどの手間がありましたが、このプランではスマートフォン標準の通話アプリを使いながらも音声通話定額を実現できるのが大きな特徴となっています。
そして日本通信がこの料金プランを実現できたのは、回線を借りているNTTドコモに対し、通話料の卸料金を「適正な原価に適正な利潤を加えた金額を基本とする料金」に引き下げるよう交渉したものの、それが決裂して総務大臣裁定を仰いだ末、卸料金の引き下げが認められたからなのです。
もちろん総務大臣裁定では音声通話定額サービスの提供が認められたわけではなく、卸料金が下がったからといって日本通信のように通話完全定額のサービスを実現するのはかなりのリスクがあります。ですがそれでもこの出来事が、長きにわたって携帯電話側の卸料金が変わらず、値下げの余地がなかったMVNOの通話料を引き下げる可能性をもたらしたことは確かでしょう。
一方のデータ通信に関しては、大手3社の接続料の関係が大きく変わったことがトピックといえます。これまで接続料はNTTドコモが最も安いとされてきたのですが、2020年度の各社が公開する接続料を確認しますとソフトバンクが最も安く、次いでKDDI、そしてNTTドコモの接続料が最も高いという結果になったのです。
その背景には、2020年度よりMVNOが事業計画を立てやすくするため、前々年度の実績に基づいて算定された接続料をとりあえず支払い、最新の実績が出た後に差分を精算する「実績原価方式」から、将来の予測に基づいて3年度分の接続料をあらかじめ算定する「将来原価方式」へと、算定方式が変わったことも影響しているかもしれません。
ですが大半のMVNOは、これまで接続料を少しでも安く抑えるためNTTドコモの回線をメインに用いてサービス提供していただけに、その序列が大きく崩れたことはMVNOの戦略にも大きな変化を与えると考えられます。
実際IIJが2020年8月20日に発表した、月額480円から利用可能なデータ通信従量制の新料金プラン「IIJmioモバイルプラスサービス 従量制プラン」は、同社がメインに用いているNTTドコモの回線ではなく、KDDIの回線のみで提供されるプランとなっています。MVNOのサービスは低価格が競争力強化に大きくつながるだけに、接続料を意識して今後他のMVNOからもNTTドコモ以外の回線を用いた料金プランが増える、あるいは安くなるといったケースが出てくる可能性は高いでしょう。
一方でこの状況は、サブブランドを持たず、MVNOに多くの回線を貸し出すことで収入を得てきたNTTドコモに不利な状況をもたらすともいえます。MVNOの環境変化を受け、NTTドコモがどのような動きを見せるかというのも今後の注目ポイントになるといえそうです。
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August 30, 2020 at 10:01AM
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