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現役F1ドライバーも参戦したeスポーツの祭典 バーチャル・ル・マン24時間 - ベストカーWeb

 2020年7月3~5日の日程でF1がオーストリアで開幕し、ようやく2020年のモータースポーツシーンが始まった。

 レース開催自粛の期間中は様々なeモータースポーツイベントが開催されたが、その中でも多くの現役ドライバーが参戦した豪華なレースが、「バーチャル・ル・マン24時間レース」。

 日本からもTOYOTA GAZOO RacingがWEC参戦ドライバーとともに参戦して話題となった。eモータースポーツならではのハプニングもあったこのレースを、森吉雄一氏に解説してもらった。

文:森吉雄一/写真:TOYOTA GAZOO Racing、REBELLION Racing、Porsche、LAILE

【画像ギャラリー】コロナウイルス感染拡大を受けて行われた『バーチャル・ル・マン24時間レース』


■コロナの影響はモータースポーツにも 

24時間の激闘の末、完走を果たしたTOYOTA GAZOO Racingの2台

 6月13~14日にかけて決勝が行われる予定だったWEC(FIA世界耐久選手権)開幕戦、フランス伝統の「ル・マン24時間レース」だが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で9月へと延期になった。

 その元々のレース日に合わせて「Virtual 24 Hours of Le Mans(バーチャル・ル・マン24時間レース)」が開催、世界の強豪チームが招待され日本からも「TOYOTA GAZOO Racing」が参戦した。

 そのドライバーラインナップだがWECはもちろん、現役・元F1ドライバー、インディ、フォーミュラEにトップSIMレーサーなど総勢200名と豪華な顔ぶれで争われることとなった。

※編注:SIMレーサー/SIM=シミュレーション。eモータースポーツで活躍するプレイヤー

■eスポーツならではのレギュレーションで競い合うレーサーたち

TOYOTA GAZOO Racingチームのコクピットルーム。「rFactor2(アールファクターツー)」というPCソフトを使用する

 このレースにはレーシングシミュレーター業界標準とよく表現される(シミュレーターショップで最も多く使用されている)「rFactor2(アールファクターツー)」というPCソフトを使用。

 参加台数はLMP2クラス30台GTEクラス20台の計2クラス50台、それぞれが実車同様独自のカラーリングやマシンのセットアップを施しての出場となった。

 チームは最低2名のレーシングドライバーと最高2名のSIMレーサー(最低1名のSIMレーサー)の4名で構成され、ドライブ時間も1人のドライバーが最低4時間、最長でも7時間と決められた。というのもリアルレーサーよりも慣れているSIMレーサーの方が有利な場面が多いからだ。

 以前フォーミュラEの替え玉事件が問題になったこともあり、リモートでの映像もしっかり顔が映るようにレギュレーションで定められた。これもEスポーツならではの規則だと言えるだろう。

 本レースで最も心配されていたのはサーバーなどの「接続問題」。同時に50台ものマシンが走行し、200名ものドライバーがそれぞれの環境からオンラインで接続される。

 実際3度のサーバーダウンによるテクニカル・レッドフラッグ(レース中断)となり、運営はTeamSpeakやDISCORDなどのトークアプリを使用し、リアルレースで主催者から配られる無線同様に再開時間がアナウンスされた。

 6月13日現地時間15時(日本時間22時)にスタートしたレースは中盤から強さを見せた「REBERION WILLIAMS ESPORT」1号車が2位とわずか17秒差で総合優勝。上位3チームが30秒以内に入るという激戦だった。

上位3チームが30秒以内に入るという激戦を制したREBERION WILLIAMS ESPORT

 GTEクラスは「PORSCHIE ESPORTS TEAM」93号車がスタートからレースを支配、序盤から終始ほぼトップを明け渡すことなくゴールした。

スタートからレースを支配し、ほぼトップを明け渡すことなくゴールしたPORSCHIE ESPORTS TEAM

 TOYOTA GAZOO RacingもWECと同じカラーリングのマシンでLMP2に参戦。

 7号車はレギュラードライバーのマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスとSIMレーサーのマキシム・ブリアン。

 8号車はセバスチャン・ブエミとブレンドン・ハートレー、山下健太(中嶋 一貴の代役)にSIMレーサーのユーリ・カスドルプ。

 途中クラッシュなどもあったが、8号車は11位、7号車は14位でゴール。

 それではレース中に起こったバーチャルレースならではのエピソードを紹介していこう。

■バーチャルレースならではのトラブルやリアルレースとは違ったレーサーたちの一面も見所

仮装空間内のル・マンの夜を疾走する山下健太選手

 これもマシントラブル? まずは走行中にハンドルコントローラーにトラブルが発生したサイモン・パジェノー選手。急いでコントローラーを友人に借りていたというプレイシートごと入れ替えて再スタート。

 慌ててコックピットを入れ替える様子が画面に映し出され話題となった。スペアを準備していたあたり、もしかしたら元々調子が悪かった可能性も?

 長い長いストレート区間が続くサルトサーキット。GTEマシンだと退屈だったのか?ストレートでアイスクリームを食べながら走行するフェラーリF1ドライバーのシャルル・ルクレール。ピリピリと緊張するレースが続く中でのほのぼのとする一コマ。

 フェルナンド・アロンソとルーベンス・バリチェロという元F1ドライバー同士チームが話題になったが、アロンソがドライブ中他車との接触でピットストップペナルティーを受けた。

 燃料がギリギリとなり補給の為にピットインしたアロンソだったが、自動的にペナルティー消化が適用となり燃料補給などのピット作業が行われずピットアウトしガス欠となった。

 そのままリタイヤかと思われたが主催者側の問題もあったと認められ次のテクニカル・レッドフラッグ時にグリッドに戻され再びレース復帰となった。

 現役F1ドライバーながらSIM好きで有名な2人、レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンとマクラーレンのランド・ノリスがタッグを組んだ。途中トップを快走する場面もあったがバグにより接触クラッシュ。

 技術的な問題をクリアできず残念ながらリタイヤ。何とノリスはフラストレーションからかレース配信中にゲームをアンインストールしていた?

 リアルレーサーよりもSIMレーサーの活躍が目立ったり、バーチャルならではのレースになるかと思いきや、意外にも観戦したモータースポーツファンからは

「実際のル・マン並みに面白かった」、「実際のレースでは2度とこんな豪華なドライバーラインナップを見ることは不可能」

 などと称賛の声も多かった。コロナウィルス問題が生んだ副産物とも言える世界最大級のバーチャルレースだったが、これが最初で最後となってしまうのは少し寂しい。

■eモータースポーツおすすめアイテム

eモータースポーツへの参入を表明したLAILE(レイル)のオリジナルコクピット市販バージョン

 2020年のオートサロン会場で突如発表され話題となったLAILE(レイル)のeモータースポーツ参入。「最強」を目指して開発されたオリジナルコクピットの市販バージョンが遂に完成した。

 元々LAILEは実車のボディー補強パーツ開発が得意分野だけに、その剛性たるや人間の体重程度ではビクともせず、災害時にはもしやそのコクピットに座っているのが一番安全なのでは?と思えるほど。

 高価だが軽量・高剛性なアルミ素材がふんだんに使用され一台一台が職人によって手作りされたメイドインジャパン品質。

軽量で高剛性なアルミ素材をふんだんに使用し、日本の職人が手作りするメイド・イン・ジャパン品質だ

 ツーリングカーらしいポジションを実現するためにフットレストまで装備したこだわりのフレームだ。これはもうゲームの延長線上ではなく、リアルからの延長線上にあると言っていい。

ツーリングカーらしいドライビングポジションを生むフットレストを装備

 定価;9万8000円(税別・シートレス)、フルバケットシート付き12万円(税別)シートカラーは赤・黒より選択

*   *   *

森吉雄一/元全日本ジムカーナドライバー。引退後はドラテクだけでなく、車両の分析力・セットアップ能力を買われ、チューニングショップやパーツメーカーのデモカー開発やタイムアタッカーとしても活躍。現在はドライビングアンチエイジングの一環としてe-motorsportsに挑戦。「50歳を超えてもまだまだ戦えることを証明したい!」

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