連日報道されている熊本を中心とした九州豪雨。テレビの映像を見て思わず言葉を失った。まだまだ安心のできない状況が続いているが、被災地の方々はとにかく命を守る行動に徹してほしい。

近年、自然災害などの影響で、当たり前の日常が当たり前ではなくなっている。コロナ禍では家族と過ごす時間が増え、大切な人との繋がりを強く感じる事も増えた。「当たり前の日常」がとてもありがたかったと気づく機会も増えたのではないだろうか。

私はこれまで飛び込みという競技を通じて、そのような経験をたくさんしてきた。ケガで練習が出来ず不安に押しつぶされそうになったときや、努力が結果として報われなかったとき、試合が怖くて逃げ出したくなったときなど、うまくいかなかったことは本当にたくさんある。

何か1つの目標に向かう過程では、誰でも経験する挫折だが、そんな中でこそ人の温かさを感じることが多かった。たくさんの人に支えられていると感じることで、感謝と責任が生まれ、目の前で起きた課題と向き合う覚悟を持ち、また目標に向かって歩み出すことができた。過去の失敗や辛い経験を前向きに捉えられるのも、きっとスポーツをしてきたからだろう。

スポーツは人々を成長させ、感動や勇気、そして夢を与えてくれる素晴らしい文化だ。

スポーツをあまりしてこなかった方々も、最近は自宅にいる機会が増え、身体を動かす事の大切さや楽しさを知った方も多いのではないだろうか。引退して思う事は、スポーツを通しての学びや考え方は「私生活でも生かせることが多い」ということ。スポーツでも予想外の出来事はよく起こる。与えられた時間をどう使うか。そしていま目の前で起こっている状況をどう捉えるか。現在の生活でもさまざまな状況に置き換えて考えることができる。

そんなスポーツが、今、コロナだけではなくさまざまな災害によって思うように練習や試合が出来ない状況になっている。残念で仕方がない。

スポーツは、人々の安全や安心の上で成り立っている。先の見えない状況にもどかしさはあるが、たくさんの貴重な経験をさせてくれるスポーツを衰退させないために、自分にできることは何か。いま一度しっかりと考え、行動していきたいと思っている。

(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)