プロスポーツを再開した国、まだ議論すらできない国……。新型コロナウイルスは各国のスポーツ界に格差を生んでいる。危機の中、新たなチャンスも見えてきた。スポーツ界の人材育成を手がける一般社団法人「スポーツビジネスアカデミー」の理事である荒木重雄、鈴木友也、杉原海太、山崎卓也の4氏がウェブ上での座談会を開いた。

再開したサッカーのドイツ1部リーグ。欧州では再開したリーグもあれば、シーズンを終わらせたリーグもある=ロイター
――世界のスポーツ界でどんな変化が出てきたか。
山崎「コロナの影響で、以前から見え始めていた未来が実現してきた。キーワードの一つがエンゲージメント(関与)だ。スポーツの価値は人と人をつなぐことにある。1984年のロサンゼルス五輪以来、スポーツが著しく商業化され、メディア露出が強調されたことで本当の価値が少し忘れられていた。試合に依存し過ぎるビジネスモデルがコロナで問い直された」
「試合ができなくてもオンラインでファンとつながるとか、人々をつなぐ役割を果たすために色々な動きが起きたのが成果だった。これからの社会を考えると、目先のお金だけでなく、人々とのエンゲージメントのベストプラクティスを示すのがスポーツの役割ではないか。東京五輪はそういうことを示す大会になればいい」
杉原「未来は分からないが、いくつかのシナリオを考え、どれが来ても対応できるようにするのが建設的なやり方。既存のモデルを維持できるシナリオもあれば、『密』の代表のスポーツイベントには企業が投資をしなくなる悲観的なシナリオもなくはない。試合中心のビジネスモデルが崩れることでスポーツの多面的な価値が表れる、ポジティブなシナリオにいけばいい」
「ロス五輪から始まったモデルはグローバル化で発展し、そのことによってお金が回るというものだった。しかし、コロナで国をまたいだ移動が一時期は停滞する可能性がある。インターネットが出てきた時と同様に、グローバル化に頼らないスポーツの価値を顕在化しようとする新しい動きが出てくるのではないか」
荒木「欧米に比べてスポーツビジネスが遅れているといわれてきた日本にとっては千載一遇のチャンス。欧米のスポーツはメディア露出を中心に大きくなった。そこへの依存度をいきなり下げられない。メディアに依存していない日本は新しいモデルを作るチャンス」
「キーワードの一つは非日常の日常化だ。今まではスポーツで非日常を演出してきたが、これからはスポーツを社会という日常の中に入れ込んで感動体験をつくれるかどうかが大事。『個ミュニティー』という造語を考えた。今まではチームとファン個人の関係だったが、これからは家族や友達、ファン同士、街のコミュニティーにスポーツが絡む新しいマーケティングが出てくるのではないか。欧米と違うモデルで世界をリードするチャンスと捉えている」
――欧米の現在の状況は。
鈴木「この1カ月でスポーツの再開に向けた日米の認識の差がかなり出てきた。日本はJリーグも7月から再開するが、米国はコロナへの恐怖感が強烈にある。まだスポーツどころじゃないという感覚が強い。再開できても、今年いっぱいは観客を入れるのは無理というのが共通認識になってきた」
「コロナでスポーツが変わるという予想があるが、米国はそんなことを考える状況ではなかった。とにかく選手、関係者への(PCRなどの)検査の頻度を試合よりどう増やしていくかにみんな必死だ。新しい取り組みは日本の方が早いと思うが、本質を見極めないと本末転倒になる。(ビデオ会議サービスの)Zoom(ズーム)での飲み会は盛り上がるが、飲み会自体はなくならない。テレビが出た時もみんな競技場に来なくなるといわれたが、そうはならなかった。全く新しいスポーツの価値が生み出されるとすると誤解が生まれるのではないか」
山崎「欧州はサッカーだけでも国によってアプローチが全く違う。フランスやオランダはシーズンを終わらせたが、スペインやイングランドは再開を決めた。イングランドも(クラブなどの)マネジメント側は試合を早く始めたいが、選手は安全性が確保されないと試合や練習に出なくてもいい権利を求めている」
――スポーツとメディアの関係性も変わりそうか。
杉原「これまではステークホルダー(利害関係者)の中でライツホルダー(放映権を持つテレビ局など)が強かったが、そこが変わるかもしれない。試合を中心としないモデルもあり得るだろう」
山崎「これまでは(放映権などの)権利を排他的なモデルにして価値を高めて買ってもらうモデルだった。これからは周辺のマーケットを広げることが求められている。コミックマーケットは、多くの人が自分の愛する漫画の同人誌をつくって売る場所。権利の問題はあるが、今こそそういう盛り上がりをうまく使って、スポーツ界に還元することが求められているのではないだろうか」
荒木「今までとアプローチが異なってくるという感覚。これからはより社会にスポーツが溶け込んだ結果、メディアの側も盛り上がって、そこにお金が生まれる可能性が十分にある。昨年のラグビー・ワールドカップ(W杯)はインターネットで注目が広がり、その集積地としてテレビ観戦も広がった。これからはこの構図だろう」
「コロナの影響で、試合を観戦に行くときにまだ心理的な壁がある。しかし、友達同士とか非常に親しい人同士ならあまり気にせずに行ける。私が携わっている、スポーツの日程を知らせるアプリ『スポカレ』でも、『見たいボタン』を押せばSNS(交流サイト)経由で一緒に見たい人を集められるチャレンジも考えている」
(谷口誠)
▽ウェブ座談会の参加者
荒木重雄(スポーツマーケティングラボラトリー代表)
鈴木友也(ニューヨークが拠点のスポーツマーケティング会社トランスインサイト代表)
杉原海太(元国際サッカー連盟コンサルタント)
山崎卓也(Field-R法律事務所弁護士、国際プロサッカー選手会アジア支部代表)
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June 08, 2020 at 01:00AM
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