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攻守ねじれた「あわや」 【スポーツの言葉考】(9) - 時事通信ニュース

2020年06月17日08時00分

中日戦で9回1死から安打を許し、ノーヒットノーランを逃した菊池雄星(西武、当時)=2013年6月12日、西武ドーム 

中日戦で9回1死から安打を許し、ノーヒットノーランを逃した菊池雄星(西武、当時)=2013年6月12日、西武ドーム 

◇伝え手の深層心理も?
 「あわや」は、国語辞典に「すんでのところ」「あやうく」とある。本来はマイナスの意味を持つ事象が現実にならずに済んだときに使う。事件、事故報道の「あわや大惨事」が代表的な用例だ。

 ところが「あわや完全試合の快投」「あわやホームランのいい当たり」といった表現が時たま見受けられる。前者は投手、後者は打者の、あるいはそれぞれのファンの立場でプラスの事象が惜しくも実現しなかったことを伝えるのに、相手側の立場で使うべき「あわや」を付けるから、違和感は明らかだ。

 伝え手は中立を旨としつつ、快挙は肯定的に伝えるのが基本。「惜しくも完全試合ならず」「もう少しで本塁打」あたりが適切だろう。

 ただ、「あわや」と言ってしまう気持ちも分かる。2000安打のように累積して達成する記録は予測も準備もできるが、完全試合のように偶発的で確率の低い快挙は予期せず起こる。

 立ち会いそうになると、高い集中力が要求され、猛烈な緊張感に襲われる。試合進行も早いので、追い詰められていく記者やアナウンサー。内心では血湧き肉躍りつつ、冷静にと自分に言い聞かす-。

 そしてたった1個の死球でも、その瞬間に記録はふいになる。緊張の糸が切れた伝え手の深層心理が「あわや」と言わせるのかもしれない。

 1993年4月27日のナゴヤ球場。中日の郭源治は阪神を相手に八回まで7者連続奪三振などで無安打。気迫も込もり、ノーヒットノーランが見えてきた。あいにくカメラマンを配置しておらず、急きょ応援を要請した。

 仲間の記者が一眼レフを携えて記者席に到着した途端、阪神・久慈照嘉のバットから快音が響いた。多くの野球記者がそんな経験をしているが、「あわや」の誤用は「記録を達成してほしくなかったのか」「相手に肩入れしているのか」と勘ぐられかねない。(時事通信・小松将之)

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June 17, 2020 at 06:05AM
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