2020年05月16日10時30分
◆時事通信社・若林哲治◆
◆今は昔、中田英寿の引退表明
このところのスポーツ報道を見ていて、変わったものだなあと思う。
2006年7月3日夜、運動部のデスク席にいると、サッカーの中田英寿が引退を表明したとの情報が入ってきた。記者会見でもテレビでもなく、中田自身のホームページに載っているという。著名人が重大発表をネットで行うことは、当時ほとんど前例がなかった。
私は、声明文の抜粋を契約新聞社に配信することにした。相当に長い声明で、抜粋しても1000字前後になった。掲載するかどうかは各新聞社の判断だが、新聞読者にはネットで読めない人も多いので、新聞社に選択肢を提供することが通信社のスタンスだと考えた。
案の定、賛否両論の反応があった。批判の多くは、新聞・通信社がネットなんかの文章を引用・転載するとは何事かという趣旨だ。当時は今よりもっと、既存メディアがネットメディアを見下していて、抜粋でさえそう言われた。
しかしその後、ネットで意思表示する著名人が急速に増え、それをオールドメディアが追う流れが定着する。問題もあるが、何しろ活字の発明以来という情報革命の流れは止めようがない。
そして今、コロナ禍でスポーツの活動も取材もままならない中、選手たちがSNSなどで発信するメッセージがオールドメディアをにぎわせている。
◆延期された「お返し」の場
日本のスポーツ界でも阪神・淡路大震災、東日本大震災などを経て、社会が大きな災厄に見舞われた時、自分たちに何ができるかを考えて行動する選手が増えてきた。今回は、感染予防のための呼び掛けや近況報告、自宅でできるエクササイズの提案など、それぞれ工夫されている。義援金やマスクの寄贈などの物的支援を含め、ファンへの思いや日頃の応援への感謝が伝わってくる。
だが半面、多くの選手は、国難の時に自分たちができることは限られていると感じてきた。
東京五輪が延期されなければ、開会式より2日早い7月22日に、福島で競技が始まる予定だった女子ソフトボール。昨年7月のまる1年前、日本代表は福島で合宿をしていた。
主将の山田恵里は大震災後、所属先の日立が開催したソフトボールの講習会で何度か福島を訪れている。18年には五輪会場となる県営あづま球場で試合もした。
「郡山へ最初に行った時はまだ放射線が強くて、室内で講習会をしましたが、皆さんの元気な姿や笑顔に、逆に私自身が勇気をもらって、今度は私が返す番だと。(講習会などでは)どのくらい元気をあげられているか分からないけど、オリンピックってすごく分かりやすいですよね。本当に恩返しの場だと思うし、そういうことでしか自分たちはお返しできないので」
◆今だからできることを
実際には、選手たちが謙遜するよりずっと、スポーツがもたらす影響、人々を勇気づける力は大きくなった。コロナ禍でSNSによる発信も力になっているが、生命や生活を脅かされている人たちの惨状を見聞きするにつけ、プレーさえ見せられない自分たちの現状がもどかしいことだろう。
だからこそ、その日が来た時により素晴らしいプレーを見てもらえるよう、発信もさることながら「受信」と「充電」が実りあるものであってほしいと願う。
今日のスポーツ選手は忙し過ぎる。練習、合宿、試合、移動、体のケア、さらにはイベント…。競技によっては国際ツアーのポイントで縛られ、少しでも試合を離れれば将来に響きかねない。
栄養学やトレーニング理論を深める、昔の選手のプレーに学ぶ、一見スポーツと関係ない本や映画に手を伸ばす-ふだん、決められたサイクルに追われてできないことがあるに違いない。競技団体や指導者は、どれだけその動機付けやサポートができているだろうか。選手任せ、所属先任せにしていないか。国やチームの間でも選手間でも、試合再開後にその差が出てきそうだ。
2月に亡くなったプロ野球の野村克也さんが今、バリバリの監督だったら、連日WEBミーティングを開いてID(データ活用)野球をたたき込んだだろう。かつてのリアルミーティングでは、後ろの方で下を向いて居眠りや落書きをしていた選手も、パソコンのカメラの前ではそうはいかなかったはずだ。そしてその教えを、全国の指導者や球児たちも見ることができたら、どんなに良かったかと思う。(2020年5月16日)
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May 16, 2020 at 08:34AM
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