どんな競技であっても、スポーツに携わる人たちにとって最高の栄誉は殿堂入りを果たすこと。
3月15日(日本時間16日)には世界最大のプロレス団体WWEが獣神サンダー・ライガーの殿堂入りを発表したが、アメリカのスポーツ殿堂に入っている日本人はどれほどいるのだろうか?
プロレス
WWEの殿堂入りを果たしたプロレスラーは獣神サンダー・ライガーが初めてではなく3人目。2010年にアントニオ猪木が、2015年には藤波辰爾が殿堂入りをしている。
* アントニオ猪木(2010年)
ご存知、「燃える闘魂」。新日本プロレスの創設者であり、1974年にWWE(当時はWWWF)と業務提携を結ぶ。1979年にはボブ・バックランドに勝利して、日本人初となるWWE(当時はWWF)ヘビー級のベルトを奪取。モハメド・アリとの戦いに代表される「
異種格闘技戦」は現在の総合格闘技の礎となった。
* 藤波辰爾(2015年)
1978年にWWE(当時はWWWF)のお膝元、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)でカルロス・ホセ・エストラーダからドラゴン・スープレックスホールドでフォール勝ちをしてWWWFジュニアヘビー級王者に輝く。1980年にはNWAインターネショナル・ジュニアヘビー級王者のスティーブ・カーンを破って、ジュニア二冠に。WWWFジュニアのベルトは1981年にヘビー級へ転向するまで50回以上も防衛した。1981年8月にMSGでジノ・ブリットに勝利してWWFインターナショナル・ヘビー級王者になり、長州力と同ベルトをかけて名勝負を重ねた。1991年にはリック・フレアーからフォール勝ちして、NWA世界ヘビー級のベルトも腰に巻いている。
* 獣神サンダー・ライガー(2020年)
1990年代に何度もWCWのリングに上がり、アメリカでのジュニアヘビー級人気向上に大きく貢献。1991年にはWCWライトヘビー級(現WWEクルーザー級)の2代目王者となる。1996年にWWFライトヘビー級、NWAジュニアヘビー級などを含む「ジュニア八冠」王者となり、2004年には自身2度目のNWAジュニアヘビー級王者に輝く。「ジュニアの象徴」と呼ばれるが、それは日本に限ったことではなく、世界中のジュニアの選手がライガーを深くリスペクトしている。
* 力道山(2017年、レガシー部門)
「日本プロレス界の父」
* ヒロ・マツダ(2018年、レガシー部門)
現役時代はアメリカを主戦場にして、NWAジュニアヘビー級、NWAタッグ王者など数々のベルトを獲得。引退後はアメリカでトレーナーとして活躍して、ハルク・ホーガンやレックス・ルガーなどを育てる。
* 新間寿(2019年、レガシー部門)
「過激な仕掛け人」の異名で知られる元新日本プロレス取締役。「猪木対アリ」戦の実現に尽力し、1980年代には日本でのプロレスブームに大きく貢献。WWE創業一族のマクマホン一家と親交が深く、WWF会長を務めたこともある。
野球
アメリカ野球殿堂は「野球発祥の地」と言われるニューヨーク州クーパーズタウンに在る。
イチローや大谷翔平などが試合で使った用具が展示されているが、まだ日本人選手でアメリカ野球殿堂入りを果たしたプレーヤーはいない。
殿堂入り資格を得るのはメジャーで10年以上プレーして、現役引退後5年以上経過した選手。引退5年が過ぎて候補者にノミネートされると投票対象となるが、全体の5%以上の投票を得られないと翌年以降の候補者リストから外される。
日本人選手として初めて候補者にノミネートされたのは2014年の野茂英雄だが、「日本球界からのパイオニア」は6票、投票率1.1%しか票を得られずに1年で候補者リストから消えてしまった。
2018年にも松井秀喜が候補者となったが4票(投票率0.9%)に終わり、殿堂入りは日本人選手にとって高い壁として立ちはだかる。
日本人メジャーリーガー初のアメリカ野球殿堂入り選手は間違いなくイチローになるはずだ。2019年シーズン開始直後に引退したイチローが殿堂入り資格を得るのは2025年。イチローが資格初年度で殿堂入りするのは疑いのないことで、2019年のマリアーノ・リベラに次ぐ史上2人目の満票選出が期待されている。
アメリカンフットボール
オハイオ州カントンに在るプロ・フットボール殿堂はNFLの殿堂。アメリカ4大スポーツの中で唯一まだ日本人選手が誕生していないNFLなので、プロ・フットボール殿堂入りしている日本人選手は当然ながらいない。
ジョージア州アトランタには大学フットボール殿堂もあるが、こちらに選ばれた日本人選手もいない。
だが、2018年に創設された女子フットボールの殿堂には、女子アメフト界のレジェンド、鈴木弘子が2019年に選ばれている。日本では5年間プレーしてチーム・オーナーまで務めた鈴木は、アメリカでも54歳まで20年間も現役としてプレー。日米で女子アメフトの存在を広く知らしめた選手として大きなリスペクトを受けている。
バスケットボール
初めてバスケットボールの試合が行われたマサチューセッツ州スプリングフィールドに在るのがネイスミス記念バスケットボール博物館。アメリカ野球殿堂やプロ・アメリカンフットボール殿堂とは異なり、この殿堂はアメリカ国内で活躍した選手やだけでなく、国際的に活躍した選手や女性選手も選ばれる。
選手部門では178人中20人のアメリカ国籍以外の選手と22人の女性選手が選出されているが、日本人選手はまだいない。2016年にヤオ・ミンが初のアジア人選手として殿堂入りを果たしている。
選手部門以外に、コーチ、功労者、レフリー、チームと5つの部門があるが、チーム部門で殿堂が創設された1959年に殿堂入りしている「最初のチーム(The First Team)」の中に石川源三郎と言う日本人選手がいる。1866年生まれの石川は20歳のときにキリスト教の研究のためにアメリカへ留学。サンフランシスコの日本人キリスト教会で4年間奉仕した後、1890年にマサチューセッツ州スプリングフィールドの国際YMCAトレーニングスクールに入学。1891年にYMCAトレーニングスクールで初めて行われたバスケットボールの試合に参加した18選手の中の1人として歴史に名前を刻んだ。
また、スペインのアルコベンダスにはFIBA(国際バスケットボール連盟)殿堂があり、こちらには日本オリンピック委員会と国際バスケットボール連盟で委員を務めた植田義巳が2007年に日本人として初めて選ばれている。
アイスホッケー
ホッケーの殿堂はアメリカではなく、地続きのお隣、カナダのオンタリオ州トロントに建てられている。NHLと国際の2部門に分かれており、NHL選手部門には日系カナダ人選手のポール・カリヤ(2017年選出)はいるが、日本人選手はいない。
国際部門には26ヶ国の選手、功労者、計230人が選ばれていて、その中で日本人は3人。プレーヤーはいなく、3人全員が功労者として選出されている。
* 堤義明(1999年)
元日本オリンピック委員会会長で、1998年長野冬季五輪招致のキーマン。日本のアイスホッケーの普及にも尽力。
* 河渕務(2004年)
元アイスホッケー日本代表監督で、1998年長野冬季五輪大会組織委員。女子アイスホッケーを五輪正式種目に残すのに大きく貢献。
* 富田正一(2006年)
現役時代は日本代表チームのゴールキーパーとして活躍して、1960年スコーバレー五輪、62年世界選手権に出場。引退後は国際アイスホッケー連盟の理事、副会長(1994年から2012年)を務める。
ゴルフ
世界ゴルフ殿堂は1998年にアメリカ有数の名門コース、ノースカロライナ州のパインハースト・クラブからフロリダ州セントオーガスティンに移転。「世界」と付くように、アメリカ国内ツアーだけでなく、世界のゴルフ界で活躍したゴルファーが選ばれるために、日本人も4人が選ばれている。
* 樋口久子(2003年、特別功労)
日本女子国内ツアー69勝。日本女子賞金ランキング1位に11回も輝いたアジアの女子ゴルフ界の第一人者。オーストラリアン女子オープン(1974年)、ヨーロピアン女子オープン(1976年)、全米女子プロゴルフ選手権(1977年)でも優勝して、日、米、欧、豪の4大陸で優勝を経験。日本人初のメジャー大会制覇。引退後は日本女子プロゴルフ協会の会長、相談役を務め、2018年には日本ゴルフ協会特別顧問にも就任。
* 青木功(2004年、国際投票)
「世界のアオキ」は日本ツアーでの51勝を含む世界の6つのツアーで通算71勝を上げる。1980年全米オープンでのジャック・ニコラウスとの死闘で、世界中のゴルフファンの記憶に「アオキ」の名前を刻む。引退後は日本ゴルフ機構会長を務める。
* 岡本綾子(2005年、国際投票)
日本女子ツアーで44勝、アメリカLPGAツアーでも17勝を上げ、1987年にはアメリカ人以外として初のLPGAツアー賞金女王に輝く。
* 尾崎将司(2011年、国際投票)
プロ野球からプロゴルフの世界に転身したジャンボ尾崎は、プロツアーでの世界記録となる通算113勝を記録。マスターズ(1973年、8位タイ)、全英オープン(1979年、10位タイ)、全米オープン(1989年、6位タイ)と世界のメジャー大会でも結果を残す。
テニス
国際テニス殿堂があるのはアメリカ北部のロードアイランド州ニューポートで、1954年に設立された。世界26ヶ国の257人が殿堂入りしているが日本人はまだいなく、2019年に中国の李娜(2011年全仏でアジア人選手として初めての4大大会シングルス優勝。2014年には全豪のシングルスも制覇)がアジア人として初めての殿堂入りを果たしている。
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March 23, 2020 at 08:46AM
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