新型コロナウイルスの影響を受けて、東京五輪が来年の7月23日開幕に延期が決定しました。
男子サッカーはU-23という出場資格をそのまま継続するのか、U-24に引き上げるのかが注目されますが、1年間の延期によって、本来ならほぼノーチャンスだった選手にも、メンバー入りのチャンスが出てくることは間違いありません。
今年のJリーグ開幕戦で確かなポテンシャルを見せた大卒ルーキーや年齢的に”谷間の世代”である99年、2000年生まれの選手なども今後の成長によって一躍、有力候補に浮上する可能性があります。
注目選手をピックアップしました。
安部柊斗(FC東京)
活躍が目立つ大卒ルーキーの中でも飛び抜けた存在であり、プレーオフを含めたACLの3試合でスタメンフル出場。豊富な運動量と、攻守に関わる抜群のセンスで4ー3ー3という新システムに取り組むチームにダイナミズムをもたらしました。右手の負傷というアクシデントがあり、Jリーグの開幕戦は出られませんでしたが、中断期間に完全復帰を果たしており、再開後に大きな注目を浴びることは間違いないでしょう。
”アベシュウ”こと安部柊斗は「持ち味は運動量とかハードワークすること」と自負します。U-23日本代表は中盤の層が厚いとは言えず、オーバーエイジを求める声も多いですが、その問題を解決する有力候補であることは間違いありません。ネックは97年12月生まれということで、U-24に引き上げられることが出場の条件となります。それは前線のジョーカーとして評価を高める紺野和也、サイドバックの実力者である中村帆高というFC東京の”大卒ルーキートリオ”全員に言えます。
小柏剛(明治大学)
金メダルを獲得した昨年のユニバーシアードで、3年生ながら10番を付けて上田綺世、旗手怜央、紺野和也などと共演したタレントであり、すでにコンサドーレ札幌が契約内定したとの報道も出ています。まずは特別指定という形で、今年のJリーグにも参戦するかもしれません。大宮ユース時代からクラブユース選手権の得点王に輝くなど、育成年代のファンには注目されていましたが、明治大学でJリーグに9人が加入した1年上の世代に揉まれ、さらなる成長を遂げたようです。
昨年のインカレ決勝では途中出場からPKを獲得し、さらに決勝ゴールをアシストしました。最大の特徴はスピードで、167cmと小柄ながら爆発力と機敏性の両方でディフェンスを翻弄できます。本職はFWですが、札幌では2シャドーの一角やアウトサイドもオプションになってくるかもしれません。森保監督か横内コーチが来年の東京五輪も率いることになれば、システム的にもアピールしやすいでしょう。
藤井智也(立命館大学)
立命館大に在学中ながら、2021年の加入が内定しているサンフレッチェ広島で特別指定選手としてチームに参加しており、過密日程が想定される再開後は多くの試合でチャンスを得るはずです。左サイドからの強烈なカットインが最大の武器ですが、広島では右のアウトサイドもオプションになってくるかもしれません。
スピードの絶対値が高く、しかも持久力があるので攻守両面でのハードワークがベースになる広島のスタイルに適している選手です。広島には柏好文というJリーグ屈指のサイドアタッカーがいるので、直接多くのものを学んでいるはず。クロスの質をどれだけ上げられるかが活躍の鍵になるかもしれませんが、順調にアピールできれば間違いなく候補に入ってくる一人です。
藤本寛也(東京ヴェルディ)
以前の記事「東京五輪にまだ間に合う!”森保ジャパン”未招集のスーパータレント」でもあげましたが、1年の延期により大きく可能性が高まった選手であることは間違いないでしょう。もともと昨年のU-20W杯で主力を担ったMFは膝の負傷で長期離脱を強いられ、五輪代表へのアピールのチャンスを得られていませんでした。
新シーズンはヴェルディでキャプテンに指名されましたが、J2の開幕には間に合わず。中断期間、さらに五輪の1年延長はポジティブに考えれば大きな転機にもなり得ます。左足のパスセンスは目を見張りますが、もっとも注目したいのはゲームメイクの能力です。AFC U-19選手けんやU-20W杯を現場で取材した実感として、相手との関係を観察しながら、90分の流れを読んでプレーしていたのが印象的でした。
そうしたプレービジョンは現在のU-23日本代表にもっとも不足しているところで、A代表では柴崎岳を重用している森保監督なら、遅かれ早かれメンバーに選ぶ可能性は高いでしょう。あとはコンディションが戻り、雌伏の時をへて再開後に実力を示せるかどうか注目です。マルチなタレントとして、過去にはサイドアタッカーでも起用されましたが、ボランチ、インサイドハーフと言ったポジションが適していると思います。
滝裕太(清水エスパルス)
昨年のU-20W杯はメンバー入りしながら怪我で辞退という不運があり、復帰後も監督交代があったチーム事情の中で、なかなか出番に恵まれないままシーズンを終えてしまいました。ボールを持てば誰でも分かる攻撃センス、ディフェンスの逆を取る能力はずば抜けたものがありますが、課題がオフのポジショニングや活動量にあったことは間違いありません。
「走る場面では走らないといけないし、見せる部分では見せるという区別をしていけば」と滝本人も強く認識しており、アタッキングフットボールのベースとしてハードワークを強く求めるクラモフスキー新監督のもとで着実に成長を見せています。ジュビロ磐田との練習試合ではサブ組が中心となる3、4本目の登場でしたが、キレのあるランニングとドリブルから3つのゴールに絡んでいました。
さらに左右ウィングと右サイドハーフでも起用されるなど、複数のポジションで可能性を示した滝は「(五輪の延期は)チャンスじゃないですけど・・・チャンスなので。やっぱり今年の1年が本当に大事になって来ると思う」と語ります。”走れるファンタジスタ”に進化したサイドアタッカーが東京五輪のメンバーに名乗りをあげるか注目です。
三木直土(ジュビロ磐田)
無観客で配信された清水エスパルスとの”静岡ダービー”で1本目からエースの小川航基と2トップを組んで、確かな輝きを放ったのがアカデミー育ちのストライカーでした。これまでJFAのナショナルトレセンなどに招集された経験はあるものの、全国区ではほぼ無名のタレントであり、昨シーズンの終盤からジュビロを率いるフベロ監督のもとで、急成長している逸材です。
2001年生まれなので来年のU-20W杯にも出場可能ですが、一気に東京五輪の候補に浮上するだけのポテンシャルを備えています。172cmと大きくはないものの、前線で起点になることができ、ワイドの動き出しや裏抜けなど、戦術的な要求に応えながらゴール前で決定的なプレーもできます。
フベロ監督も試合後には「三木にはおめでとうと言いたい」と名指しで活躍を祝福しており、再開後の試合で多くのチャンスを得ることは間違いないでしょう。J2が舞台になりますが小川とともにゴールやアシストを重ね、圧倒的な存在感を示すことができれば有力候補に浮上してくるはずです。
山田康太(水戸ホーリーホック)
藤本と同じく昨年のU-20W杯に出場し、様々なポジションで獅子奮迅の活躍を見せましたが、良くも悪くも”便利屋”という印象は拭えませんでした。それはアカデミーから昇格した横浜F・マリノスでも同じで、昨年の夏にはテクニカルなスタイルを押し出す風間八宏監督の名古屋グランパスに成長の環境を求めましたが、直後に監督が交代。残留争いを戦うチームで出番を全く得ることなくシーズンを終える結果となりました。
”再レンタル”という形で移籍したのはJ2の水戸。コーチとしてU-20日本代表を支えた秋葉忠宏新監督のもと、中盤のパスワークを掲げるチームの中盤に抜擢され、持ち前の技術、ボールを捌きながら相手の嫌なところに顔を出すセンスを発揮し、開幕戦ではゴールも決めました。マリノスでは”ハマのプリンス”の愛称で親しまれていますが、実際は泥臭くハードワークし、デュエルも厭わない選手です。しかし、そこに創造的なプレーが加わり、まさしく”プリンス”の輝きを放つ山田は東京五輪の有力候補になりうる選手と言えます。
西川潤(セレッソ大阪)
注目度では今さら特筆する必要もないかもしれませんが、東京五輪が今年の夏開催であれば18人に入る可能性はゼロに近かったでしょう。これまでも試合の視察に訪れた森保監督にメディアから質問が出ていますが、その才能を認めながらも「権利のある世代は全員が候補に入ってくる」と言った回答でした。
しかし、開催が来年となれば話は別です。当面は来年のU-20W杯を目指す”影山ジャパン”で攻撃の中心を担うと見られますが、東京五輪の開幕が7月23日になったことで、5月の終わりから6月はじめに行われる(正式な開催日程は未定)U-20W杯からの”飛び級参加”も可能です。2004年パリ五輪の世代ですが、抜群のセンスとパーソナリティで東京五輪のヒーローになっていく資質は十分です。
斉藤光毅(横浜FC)
西川とともに”飛び級”で昨年のU-20W杯に出場したタレントで、不運な怪我などがなければ、もっと早く世間で注目されていたかもしれません。一方で、横浜FCガアカデミーから大事に育ててきた側面もあります。今年になって急にメディア露出が増えているのも、そのためでしょう。独特のボールタッチを駆使する仕掛けはディフェンスがファウルで止めるのにも苦労するレベルです。
攻撃的なポジションならそこでもこなしますが、最も得意とするのは左ウィングです。横浜FCには松尾佑介という同じポジションを主戦場とする大卒ルーキーの好タレントがおり(97年生まれで、U-24に引き上げなら出場資格がある)、起用法はなかなか難しくなりますが、切れ味鋭いドリブルはJ1でも通用するはずです。
追い風になるのは今シーズンの降格が無くなったこと。残留争いが予想された中で、どうしてもヴィッセル神戸との開幕戦のように、守備的な戦いが予想されましたが、下平隆宏監督がより積極的なゲームプランを押し出すことができれば、斉藤光毅の出番も増えてくるでしょう。西川と同じ”パリ五輪”世代で、次のU-20W杯にも資格はありますが、すでに主力としての参加を経験しており、今後のアピール次第では東京五輪に向けたU-23日本代表の活動がメインになる可能性もあります。
鈴木彩艶(浦和レッズ)
現在17歳で高校に在学中のGKですが、ここで名前をあげることはサプライズでも何でもありません。まだ浦和レッズユースに所属の身ながら、ルヴァン杯、さらにJリーグの開幕戦でベンチ入りしており、元日本代表の西川周作を脅かす一番手としてクラブの期待を受けています。昨年のU-17W杯では守護神としてチームを支え、世界を相手に安定したゴールキーピングを披露しました。
身体能力の高さは言わずもがな。今年の浦和レッズはGKからのコーチングを非常に重要視しているようですが、その点でも鈴木彩艶はアピールしており、パーソナリティーでも期待できます。東京五輪の守護神候補である大迫敬介に関しては「サッカー男子の”守護神候補”大迫敬介は東京五輪の開催延期もポジティブに受け入れる」という記事を書きましたが、その中で大迫は「これから先にもライバル関係になっていくと思う」と語っています。
彼も西川や斉藤とともにパリ五輪で主軸を担っていくべきタレントですが、1年間の延期になった東京五輪で、そうした選手が”飛び級”で活躍すれば世代の経験という意味でも、盛り上がりという意味でも大きな価値があるので、実力勝負の中でも期待したいところです。
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March 31, 2020 at 09:57AM
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東京五輪の1年延期が新たな競争を生む。U-23日本代表に未招集の注目タレント10(河治良幸) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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