2020年11月15日09時00分
２０１９年１０月に開かれた「リーグ・オブ・レジェンド」世界選手権の会場＝スペイン・マドリード【ＥＰＡ時事】
◆ノンフィクションライター・松瀬 学◆
新型コロナウイルスの影響もあってだろう、「ｅスポーツ」が盛り上がりを見せている。１０月、日本スポーツ産業学会の「ｅスポーツに関するオンラインセミナー」に参加すると、ｅスポーツの専門会社ＮＴＴｅーＳｐｏｒｔｓの顧問、梁瀬和人さんは言葉に力を込めた。「日本でのｅスポーツの成長のチャンス、伸びシロは非常に大きい」
そもそも、ｅスポーツとコンピュータゲームの違いをご存じか。ｅスポーツは「エレクトロニック・スポーツ（ｅｌｅｃｔｒｏｎｉｃ ｓｐｏｒｔｓ）」の略称で電子機器を通じての競技全般を指す。１人でも遊べるゲームに対し、ｅスポーツはコンピューターゲームをスポーツとして捉え、個人やチームで対戦、勝敗および順位を競うものである。
ｅスポーツの場合、一般のリアルスポーツと同様、プレーヤーだけでなく、多くの観客が観戦することも特徴と言える。梁瀬さんが、リアルスポーツとの違いを説明する。「スポーツには汗をかいたり、体を動かしたりするイメージを持たれていますが、ｅスポーツは人のプレーを見たり、一緒に周りの人と感動して騒いだり、人を熱くさせることも魅力なのです」
またｅスポーツには、性別や年齢、障害の有無を問わず参加できる。日本のゲーム人口は約５０００万人と言われ、その人たちはｅスポーツの選手になる可能性を秘めていることになる。つまり、ｅスポーツの市場はでかい。
もっとも、現在の日本のｅスポーツのプロ選手は２１７人に過ぎない。まずはｅスポーツをたくさんの人に認知してもらい、もっと市場を拡大していかなければならない。「個人的な期待ですが」と前置きし、梁瀬さんは言った。
「やはりスーパースターの登場でしょうね。Ｊリーグの三浦カズ（知良）さんみたいなスーパースターが出てくると、おそらく（ｅスポーツ市場は）変わるのではないでしょうか」
日本はもともとゲーム大国として有名だが、米国や欧州、中国、韓国などと比べると、ｅスポーツ市場の成長は遅れている。２０１６年ぐらいから国内イベントが本格化し、１８年２月、日本ｅスポーツ連合（ＪｅＳＵ）が設立された。２０年１月には株式会社ＮＴＴｅ―Ｓｐｏｒｔｓが創設され、８月１１日に東京・秋葉原にｅスポーツ発展の拠点として「ｅＸｅＦｉｅｌｄ Ａｋｉｂａ」がオープンした。
ＪＲ秋葉原駅前のビルの４階。８月にこの施設を訪ねると、外から丸見えのガラス張りの造りになっていて、そのオープンさと明るさに驚いた。大型のＬＥＤパネルが目立つプレーエリアほか、カフェエリア、ＩＣＴエリア、配信エリアから成り立っている。梁瀬さんが言葉を足す。「施設の明るさやオープンさはｅスポーツの印象をがらりと変える環境だとみられています」
ｅスポーツの可能性は無限大である。特に自治体、学校、医療関係者などからの引き合いが増えており、ｅスポーツを地域活性化のコンテンツとする動きも起きている。例えば、老人ホームではｅスポーツで手や脳を動かすことがボケ防止につながる。空港や複合商業施設、ホテルなどではｅスポーツエリアを設けることがビジネスにつながっていくかもしれない。
スポーツ競技としては、ｅスポーツは２２年の中国・杭州アジア大会で実施されることになっている。国際オリンピック委員会（ＩＯＣ）もオリンピック大会の実施競技に追加するかどうかの検討に入っている。
もっとも課題は多々、ある。いかに選手人口を増やし、裾野から国の代表まで、それぞれの階層を充実させていくのか。そのためには、誰でも参加できる環境づくりも必要だろう。また大会としては、スポンサー、テレビ局、チケット販売会社などをどう巻き込んでいくのか。加えて、ｅスポーツのさらなる発展には、教育関係者の理解が必要となるだろう。コンプライアンス（法令順守）、ガバナンス（統治）も重要か。
とにかく、ｅスポーツは地方創生の起爆剤になり得る。梁瀬さんは「地域で（ｅスポーツの）火がついて、選手や環境ができあがって、土壌ができていってほしい」と期待するのだった。
（時事通信社「金融財政ビジネス」2020年10月29日号より） 
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November 15, 2020 at 07:00AM
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