スポーツは、基本的には目で見て楽しむことが多いですよね。しかし、目からの情報だけで私たちは本当に、そのスポーツを理解していると言えるのでしょうか。例えば、フェンシング。剣で互いの体を突いて勝敗を決めるスポーツで、力だけでなく相手の動きを読んで駆け引きをするのが特徴です。
でも、その駆け引きって、一体どんなものなのでしょう。実は見えていない部分がスポーツにはたくさんありそうです。
見えないものを伝えたいと、東京工業大学とNTTが、身近なモノを使ってスポーツを“翻訳”する取り組みを進めています。
(さいたま放送局記者 清有美子)
新スポーツ、使うのは木片?!
8月中旬、東京 大手町にあるNTTの会議室で、新しいスポーツの体験会が開かれていました。
集まったのは子どもから大人まで10人余り。
このスポーツで使うのは、壁の装飾などに使われるアルファベットの白色の木片。100円ショップなどでも売っているものです。2人1組で向かい合って座り、目をつぶった状態で木片を「知恵の輪」のように絡めます。
そして、10秒間の制限時間内に、1人は外そうと、もう1人は外されまいと競い合います。
スポーツの本質をひもとく
この新しいスポーツのベースとなっているのは、フェンシングです。
東京工業大学とNTTは、視覚に障害のある人と一緒にスポーツを観戦するするにはどうすればよいのか探ろうと、3年前から野球やテニスなど10の競技で研究を進めてきました。
第一線で活躍するアスリートなどの監修を受けながら、その競技の本質を追求。その動きなどを日用品を使った体験に置き換えることで“翻訳”し、新たなスポーツを生み出してきました。
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗准教授は、新たなスポーツができた経緯を次のように説明します。
伊藤亜紗准教授
「視覚障害がある人と一緒に観戦して、自分が目で見ている情報を実況をしても、うまく伝わらない。そもそもスポーツ選手は視覚だけでなく聴覚や触覚、さまざまな感覚を駆使して競技をしているので、見えない人のために見える情報を変換しようとするのではなく、視覚ではないところに注目しました。スポーツの特徴、動き、おもしろさを“翻訳”して身近なものを使って置き換えて実際に体験してみたら、見えない人にもそのスポーツがどのようなものか分かるし、体験するとおもしろいし、見える人にとってもスポーツの新しい側面が見えてきたんです」
フェンシングをひもとくと…
研究者たちは、ロンドンオリンピックの銀メダリスト(男子フルーレ団体)の千田健太さんに監修を依頼して、剣の扱い方や競技の特徴を尋ね、ボールや棒など身近なモノを使ってどのように日常的な動きに置き換えられるか探っていきました。
フェンシングの剣をイメージし、研究員たちは当初、ウレタンの棒やヘアブラシなど棒状のものをぶつけ合いますが、千田さんは首をかしげるだけでなかなかフェンシングらしい動きとはなりません。
30種類以上試して、千田さんが「フェンシングっぽい動き」と手に取ったのがアルファベットの木片。「知恵の輪」のように絡ませて1人が外そうと、1人が外されまいとする動きでした。
この動きは、力任せではなく指の力を使うことや相手の動きを先読みして攻めたり守ったりして駆け引きをするところなど、競技の魅力や奥深さが集まっているということでした。つまり、フェンシングの本質を“翻訳”することができたのです。
千田健太さん
「指先の感覚を頼りに木片を動かして、相手の木片と接触しながらうまく駆け引きしていくというのが、フェンシングの剣を扱うフィンガリングや駆け引きとすごく似ていると思いました」
さらに、誰でも楽しめるスポーツにするためルールも工夫しました。
見えないことがハンディーにならないようお互い目を閉じること。それに力勝負にならないよう、木片は親指と人さし指でつかむことにしたのです。
“多様性”を伝えるツールにも
8月に行われた体験会では、スポーツ経験のない子どもや障害がある人がメダリストに勝ったり、大人が子どもに負けたり、参加者全員が指先の動きに集中して楽しんでいました。
参加した日本フェンシング協会の太田雄貴会長は、この新しいスポーツを学校訪問の場で子どもたちと一緒に体験したり、競技の大会で実施したりして、フェンシングの普及や多様性を考える機会に活用したいと考えています。
太田雄貴会長
「目を閉じて行うので、目が不自由な方ともプレーが可能になりますし、健常者どうしが目を閉じてやることで、こんなに大変なんだとか、こういうことができるんだという気付きもあると思います。社会が抱える課題を一緒に感じ取ったり考えたりしていきたい」
新型コロナが観戦スタイルも変える?
NTTは触覚を使ってスポーツを楽しむ研究を進めています。渡邊淳司 上席特別研究員は、2019年のラグビーワールドカップで試合会場の歓声や盛り上がりの大きさをリアルタイムで振動に変換して伝送し、遠く離れたパブリック・ビューイングの会場で応援する観客のイスや足元を振るわせて会場の一体感を高める取り組みを行いました。
こうした新たなスポーツの楽しみ方は、新型コロナウイルスの感染拡大で、1つの試合会場に大勢が集まって試合を観戦するのが難しくなる中で、より大きな意味を持ってきているといいます。
渡邊淳司さん
「離れていても近くにいるかのような観戦体験は、感染拡大が続く中、みなで競技を楽しむための一つのヒントになるかもしれません。木片を持つ指先でフェンシングの魅力を感じたように『触覚』を通じたスポーツ体験は新しい競技の楽しみ方や応援の形になるかもしれません」
来年予定されている東京オリンピック・パラリンピックでは、これまでとは違ったスポーツの楽しみ方や応援スタイルの登場が期待できそうです。
さいたま放送局記者
清 有美子
平成15年入局 京都局、経済部、報道局遊軍を経て現在は、さいたま市政や経済を担当
大学ではフェンシング部
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September 02, 2020 at 04:46PM
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