
錦織圭も在籍していた最高峰のスポーツ教育機関「IMGアカデミー」。2019年末までアジアトップを務めた田丸尚稔氏が語る、スタジアム最新事情。
スポーツ目線での「街づくり」
ここ数年、スポーツ界隈では、スタジアムあるいはアリーナの新設やリノベーションに関する議論が活発である。 たとえばJリーグやBリーグなどプロチームの拠点として構想されている建物だけでも全国各地で枚挙にいとまがない。インターネットで「スタジアム構想」とでも検索をかければ、ずらずらと結果が出てくるので試してみてほしい。 スポーツを産業として拡大していくには、必要不可欠なものとして、オリンピック・パラリンピック以降はさらに議論が広がっていくのは間違いないだろう。 一方で、地域の活性化あるいは再生を目指すためのキーコンセプトとして「スポーツ」を掲げる都市も多く、その象徴的な存在としてのスタジアムやアリーナが構想されているという側面も多分にある。スポーツが主体となって場を求めるのに対し、場が主体となりコンテンツとしてスポーツを求めている、というものだ。 いずれにしても、それらを語るうえで出てくるのは「街づくり」という視点だ。 単純に建物を造るだけではなく、スポーツ以外の目的も含めて恒常的に人を集められるのかがとても大事…というわけで、マンションなどの住居エリアやショッピングモールなどの商業施設も併設することで総合的な街づくりをしようというアイデアが出てくる。 なるほど…とは思うかもしれない。しかし、想像してみてほしい。そんな街が全国で1つ、2つできるのであればまだしも10も20もできたとして、規模の大小こそあれど画一的になってしまえば、それぞれの地で同じように愛され続けるのだろうか? そこで、少し海外のスタジアムやアリーナに目を向けてみることにする。
目指すは、自宅以上にくつろげる施設。
2019年末にフォーブス誌がまとめた記事で、複合施設の最も成功した事例の一つとして挙げたのは、NBAのミルウォーキー・バックスが拠点とするファイサーヴ・フォーラムだ。 500億円以上の費用をかけて2018年8月に完成、約1万8,000人を収容し、バックス以外にも、NCAAのディビジョン1に属するバスケ強豪校であるマーケット大学のゴールデン・イーグルスも拠点にしている。 「ディア地区」と呼ばれるエリアにはアリーナのほかにエンターテインメント・ブロックとしてのショップやレストランに加えて、住居棟も並ぶ。ここまでなら一般的なスタジアム、アリーナ構想の街づくりの範疇になるけれど、さらには大学や医療機関、そしてトレーニングセンターも充実しているというのが特徴だ。 「自分のリビングルーム以上にくつろげるように、訪れるあなたが自分で一日をデザインしたり、長く滞在したくなる街にすることが私たちの戦略です」 そうフォーブス誌で語ったのはバックスの球団社長、ピーター・フェイギンだ。「この地区が人々にとって本当に健康的であること。それを目指して施設を造っています」 実際に、大学や医療機関と連携し、特に地域住民には健康トレーニングプログラムを提供しているのは注目したいところだ。 “点”で存在する施設を健康というテーマを設定することで“線”で結び、その地区を“面”で展開する。そのような考え方は、日本の施設開発や街づくりにもとても大切になってくるだろう。 テーマは健康でも、何でもいい。答えは、きっとそれぞれの地元にある“それぞれの強み”になるはずだ。 スポーツ施設+商業施設+住居棟。ここまでなら画一的に留まるけれど、長く愛されるには地元の人々とアイデアが有機的につながる仕組みも重要で、“コミュニティ”作りもキーになるが、その話はまた別の回でまとめてみたい。
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August 02, 2020 at 01:30PM
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