2020年09月21日09時00分
◆ノンフィクションライター・松瀬 学◆
なぜ、大学スポーツ界の暴行・パワハラは、なくならないのだろう。
過日は、日本大学ラグビー部で元ヘッドコーチ(HC)の40代の男性が、ラグビー部員に暴行を繰り返していたことが明らかになった。
頭に爪ようじを数本刺された部員のショッキングな写真も、新聞紙上に載った。ひどい。言語道断だ。
この男性コーチの行為はもちろん、大学の対応の拙さも問題だろう。
◆上下関係
真夏日の8月某日、全国221校が加盟する大学スポーツの統括組織、「大学スポーツ協会(UNIVAS=ユニバス)」の池田敦司専務理事にオンラインインタビューすることができた。
そこで、日大の不祥事の感想を聞くと、池田さんは顔を少し、ゆがめた。
「まさに、あってはならないこと、非常に残念なことです。なぜ、こうなってしまったのだろうと思いを巡らせました。日本の古い習わしかもしれませんが、上下関係が根底にあるのではないでしょうか」
確かに、スポーツ界には勝利至上主義、閉鎖的なムラ社会、理不尽なタテ社会がはびこってきた。
でも、2012年、大阪・桜宮高校バスケットボール部キャプテンが自殺に追い込まれたあたりから、一気にスポーツ界のパワハラが注目されるようなった。
13年には、女子柔道日本代表クラスが日本代表の男性監督をパワハラで訴え、パワハラ撲滅の機運も高まった。
だが、その後もスポーツ界の暴力事件、パワハラは後を絶たなかった。
◆優位性を背景に
厚生労働省による「職場のパワハラ」の定義は、〈同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう〉となっている。
スポーツ界でいえば、〈人間関係などの優位性を背景に、指導の適正な範囲を超えて、肉体的・精神的苦痛を与える又は活動環境を悪化させる行為〉となる。
選手の尊厳を無視した指導は、時として、ハラスメントになる危険性をはらむ。
日大では、2年前に、アメリカンフットボール部の不祥事もあった。
コーチから悪質タックルを強要された日大アメフト部の学生は記者会見で、「大学に入ってアメフトをあまり好きではなくなりました」と漏らした。
今回のラグビー部の部員たちも、ラグビーを嫌いになっているのではないか、と心配になる。
ユニバスの池田さんは、今回のラグビー部の不祥事には三つの問題点があったと指摘する。
(1)ヘッドコーチ本人の資質の問題(2)なぜ、そのコーチを起用したかという部の問題(3)大学がどう責任を取るのかというガバナンス(統治・管理)の問題――である。
◆スポーツ価値の最大化
池田さんは、こう言葉を足した。「恐らく、表面化したのは氷山の一角で、全国の大学には同様の問題があるのかもしれません」
「日本版NCAA(全米大学体育協会)」と形容されるユニバスには、大学スポーツ界のビジネス化を図る狙いもあろう。
マーケティングとは、価値の創出であり、スポーツマネジメントとは、スポーツの価値の最大化を図ることでもある。
そういった意味では、まずは大学スポーツの価値を毀損(きそん)する体罰・暴力などのハラスメントは撲滅しなければならない。
ユニバスは昨年3月の発足直後から、「学業充実」「安全・安心」「スポーツ振興」を目指し、学長懇談会や、大学スポーツの担当者、部活動の主将、主務を集めた各種研修会や運動部の運営手引書の配布などを実施してきた。
指導者のコンプライアンス(法令順守)徹底、大学のガバナンス強化も図ってきた。要は意識改革、さらには何事も「絵に描いた餅」にならないよう、どう実効性を持たせるかだろう。
最後、ユニバスの存在意義を聞くと、池田さんはメガネの奥の柔和な目をさらに和ませながら、「シンプルに言えば」と前置きして、こう言った。
「頑張っている運動部学生をハッピーにするためにあるのです」(8月21日記)
(時事通信社「金融財政ビジネス」より)
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September 21, 2020 at 07:00AM
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