本来は「楽しむこと」 政治利用皮肉も
金沢21美 9月27日まで
金沢21世紀美術館で、アートを通してスポーツが本来持つ意味を問いかける展覧会「de−sport :芸術によるスポーツの解体と再構築」が開かれている。元々は「遊び」だったスポーツが、勝敗を競うエンターテインメントとして商品化され、時に政治的プロパガンダにもなる現代スポーツのあり方に、芸術の視点から再考を促しているかのようだ。九月二十七日まで。=敬称略(松岡等)
スポーツにまつわる九カ国、十組の作家の作品を集めた。展覧会タイトルの「de−sport」は、中世フランス語で「楽しむこと」を意味し、スポーツを解体・再構築する意味も込められている。
国家や歴史的トラウマ(心的外傷)に関する問題を作品化する柳井信乃の「Blue Passages」は近代五輪の聖火リレーを問う。聖火リレーは一九三六年のベルリン五輪でナチス政権が欧州文明の継承者であることを誇示するため始まった。柳井さんは、ユダヤ系ドイツ人の思想家ベンヤミンがナチスの追っ手を逃れたピレネー山脈の道をオリンピックトーチを掲げて歩くパフォーマンスを行い、そのドキュメント映像を展示する。
シャルル・フレジェ(フランス)は、相撲や水球などの若い選手たちの同じ構図のポートレート写真を並べることで、スポーツが持つ規律性や自己犠牲が身体的な特徴として現れることを浮き彫りにする。
21美が開館時から所蔵するガブリエル・オロスコ(メキシコ)の「ピン=ポンド・テーブル」は、四人で卓球を実際にプレーできる体験型の作品。日本のアーティスト・チーム「ザ・ユージーン・スタジオ」は、架空のスポーツ史家がジャズを演奏しながらチェスをするという「新しいスポーツ」を生み出したという想定で、実際のパフォーマンスを映像として提示した。本来は創造的な「遊び」としてあったスポーツの特徴がユーモアとともに表現される。
このほか戦車を逆さまにしてランニングマシンに見立てたアローラ&カルサディーラ(プエルトリコ)の「陸上競技」、社会主義国家時代の銅像を重量挙げの選手たちが持ち上げる様子をTV番組仕立てにしたクリスチャン・ヤンコフスキー(ドイツ)の作品「重量級の歴史」など、スポーツの政治性を皮肉る作品も紹介されている。
東京五輪・パラリンピックが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期される中で、展示は改めてスポーツや五輪の意義を考え直す機会になりそうだ。
29日、「Zoom」でトークイベント
展覧会に合わせ、トークイベント「スポーツ、アート、社会−『de−sport:芸術によるスポーツの解体と再構築』展をめぐって−」が二十九日午後五時から、ビデオ会議アプリ「Zoom」で配信される。
展覧会で示されたアートからの問いかけを踏まえ、スポーツ社会学者、文化研究者が、現代社会におけるスポーツのあり方や、これから向かうべき方向などについて議論する。
参加するのは、社会学者でスポーツやメディアの人種差別などを研究する小笠原博毅・神戸大教授、スポーツ社会学やカルチュラル・スタディーズなどが専門の山本敦久・成城大教授、展覧会を企画した高橋洋介学芸員。イギリスの現代史・文化研究者の稲垣健志・金沢美術工芸大准教授が司会を務める。
小笠原、山本両氏には共著に「やっぱりいらない東京オリンピック」(岩波ブックレット)などがあり、五輪など巨大スポーツイベントの問題点や社会の中でのスポーツのあるべき姿を考える。
視聴は予約制で無料。予約は、イベントに協力している書店「石引パブリック」のホームページから。
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