地銀生き残り競争熾烈に、上場廃止や破綻懸念もー新型コロナ追い打ち - ブルームバーグ

新型コロナウイルス感染拡大による急速な世界経済の悪化は、長引く低金利で厳しい経営環境下にある地方銀行に追い打ちをかける可能性がある。アナリストや投資家は、融資先企業の破綻や有価証券運用での損失により、上場廃止や破綻に追い込まれる銀行も出てくると懸念を示す。

　　「存続が危うくなり、上場廃止や国の管理下に置かれる銀行は確実に出てくる」。ロンドンを本拠とするホースマン・キャピタル・マネジメントのヘッジファンド運用者、シャノン・マコノヒー氏はブルームバーグとの取材で、日本の地銀の先行きはかつてないほど不透明だと指摘し、破綻に至れば既存株主の実質持ち分がゼロになると述べた。

　　日銀の低金利政策や人口減少で、地銀の本業収益は低迷している。ＳＢＩ証券によると、2019年３月期にコア業務純益が赤字だったのは上場地銀79行のうち40行。約半数が経営戦略の立て直しを急ぐ中、新型コロナへの対応も迫られている形だ。

　　金融庁は金融機関に対し、新型コロナの影響を受けた事業者から条件変更の相談があった場合、審査を行うことなく３カ月間の元金据置や期限延長など柔軟な対応を求めている。日銀は21日の金融システムリポートで、実体経済への影響が長引くと、足元の資金繰りひっ迫が信用力の問題につながる企業が増える可能性に 言及した。

　　ＰｗＣアドバイザリー合同会社の山田能伸シニアアドバイザーは、こうした環境から、過去数年間は歴史的低水準で推移してきた銀行の与信費用が今後跳ね上がるリスクを指摘。業務純益の低下が続いている状況下では「最悪の場合、赤字の地銀が増加し、それが地域経済の重荷となることが考えられる」と述べた。

急拡大の懸念

上場地銀79行の与信費用の合計

出所：金融庁

　　こうした懸念に対し、全国銀行協会の三毛兼承会長（三菱ＵＦＪ銀行頭取）は１日、リーマン危機以降、十分な資本や流動性を確保し、財務の健全性や弾力性も強化されたと認識していると述べ、「経営に直ちに不安な要素を持ち込むことはない」との 見方を示した。

　　ただ、影響は顕在化しつつある。格付け会社ムーディーズ・ジャパンは17日、第四銀行（新潟県）、百十四銀行（香川県）、山陰合同銀行（島根県）の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。これら３行は小売りや宿泊、飲食サービス業のエクスポージャーが大きく、新型コロナ終息後も本拠を置く県の経済成長率が「感染拡大前の水準に回復させることが容易でないとみられる」としている。

有価証券運用でも苦戦か

　　新型コロナによる影響は、地銀の有価証券運用益にも及ぶとみられる。これまで邦銀は、低金利環境の長期化に伴う資金の運用難を背景に外債のほか、不動産やヘッジファンドなどオルタナティブ投資を増やしてきた。しかし、世界規模の経済活動の停滞で不安定な相場環境が続いている。

　　ＰｗＣの山田氏は、市場の反転に機動的に対応できるのはメガバンクなどに限られており、地銀は利回りが下がったとしても安全運用が基本になると指摘。信用力の低い米国企業向け貸出債権を束ねたローン担保証券（ＣＬＯ）などへの投資では、ドル調達が円滑にできるかも問われることになり、地銀にとって難しい環境になるとの見方を示した。

利回り求めて運用多角化

低迷する日本国債以外の運用先を狙う

出所：日銀、ブルームバーグ

　　また、安定投資先として地銀が保有してきた国債の多くが今後２－３年で償還 期限を迎えることから再投資先を検討する必要もある。ブルームバーグが３月１日から31日にかけて地銀を対象に行ったアンケートでは、回答した21行のうち19行が、償還資金を国内株式・社債に再投資するという。

　　新型コロナが与える今後の投融資方針への影響についての回答では、「含み益の減少により有価証券部門の収益ポテンシャルが低下した」「より慎重な見極めが必要となる」など、収益環境の厳しさを指摘する声が多かった。

国内アセットに再投資へ　

国債の償還資金の運用先

出所：ブルームバーグ調べ

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April 23, 2020 at 03:00AM
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