新型コロナウイルス感染拡大の影響について説明する山本社長。終息後を見据え、ビジネスチャンスを探る（撮影・福島範和）【拡大】
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、来夏に延期された東京五輪に関連する事象を取り上げる連載「リスタート・東京五輪」（随時掲載）の第３回。今月７日には緊急事態宣言が発令されるなど、スポーツの環境も激変する。選手のマネジメントなどを手掛けるスポーツビズの山本雅一社長（５５）に、“コロナ余波”が直撃するスポーツビジネスの現状を聞いた。（取材構成・角かずみ）
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、現役選手や文化人、指導者ら６０人が所属するスポーツマネジメント会社にも大きな打撃を与えている。
「今夏開幕予定だった東京五輪に向けてスポーツ教室や講演会、番組解説など多くの出演予定があった。新型コロナウイルスの影響は２月から出始めて、今年１月からの半年で年間売り上げの１カ月分くらいの損失が出そうだ」
山本社長が眉をひそめた。人と接する機会が多い仕事で、新型コロナウイルスの感染拡大は経営を直撃した。出演予定だったイベントがキャンセルされ始めたのは２月。３月に入って急増し、２月は１４件だったキャンセル数が３月には６３件に上った。４月も現時点で２６件ある。終息が見通せない状況で、５月と６月に予定された２７件のイベントの中止も決定した。
「この状況が今年いっぱい続くなら、年間収益の３０％近くを失ってしまう可能性がある」
スポーツビジネスの分野を切り開いてきた敏腕社長にとって、かつてない難局に直面している。１９９６年１１月にスポーツビズを設立。今ではフェンシング男子エペのエースで東京五輪では金メダルが期待される見延和靖（３２）、元競泳女子日本代表でスポーツキャスターの寺川綾（３５）らが所属し、スポーツマネジメント界でトップクラスを誇る規模に成長した。感染症問題の長期化は、その経営基盤を揺らがすほどのインパクトがある。
東京・府中市から引き受けた東京五輪に向けてのサイクリングフェスティバル、東京・目黒区から受けたイベントなど、制作イベントの中止も影響が大きい。運営費が１０００万から３０００万円ほどの規模で東京五輪に向け各企業が仕掛けようとしていた事業は、特に“密集”が見込まれるものについては軒並み中止に追い込まれた。
「２月後半からイベントができない方針になって、影響が出ている。現役選手は実業団と契約しているので収入は支えてもらえるが、スポーツ系の文化人は仕事がなくなると収入もなくなってしまう。聖火リレーもうちから１８人が走る予定でしたが、延期になってしまった」
コロナ余波で先が見通せないスポーツビジネス界。それでも、来年以降は世界的なスポーツイベントがめじろ押しだ。来年７月２３日に開幕が延期された東京五輪、その６カ月後に開催される２２年北京冬季五輪、サッカーＷ杯カタール大会、陸上と水泳の世界選手権が“景気回復”の切り札になる。
「スポーツ需要は必ず戻る。そこに向けてどうＶ字回復していくか」
感染終息の時期が不明な中で、山本社長はいま必要なことを冷静に見つめる。東京五輪が開催されていたはずの日程（７月２４日からの約２週間）でイベントはできないかという短期的な視点。延期された五輪を含めた世界的なスポーツイベントが開催される１８カ月後からの半年で何ができているかという長期的な視点。その両方を同時に持つことだと説く。
「危機的な状況の中、スポーツの新しい価値や文化の創造、アスリートが持つ潜在力をどう引き出すかを試されているように思う。社内では『エキストラ・エンド（カーリング用語で延長戦）』を楽しもうとすることが大切だという考えで動いている」
経営者として大きな壁を前にしても、考えはいたってシンプルで前向き。かつてないピンチを成長のチャンスに変えられるか。奮闘の日々が続く。
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April 13, 2020 at 08:00AM
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【リスタート・東京五輪】スポーツビズ・山本雅一社長、最悪年間収益３０％減も…「需要は戻る」Ｖ字回復へ - サンケイスポーツ
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