五輪開催にも暗雲 一変するスポーツの風景 - 日本経済新聞

無観客で千秋楽を迎える大相撲、延期した公式戦開幕の日が決まらないプロ野球――。新型コロナウイルスの流行はスポーツ界に大きな影響を与えている。国を越えて感染が広がる中、欧州のサッカーリーグなど世界で人気を誇るスポーツも相次ぎ試合を中断した。東京五輪関連では、予選が中止となったりテスト大会が選手なしで行われたりした競技も。選手や関係者が不安を募らせる中、五輪の聖火は20日に日本に到着。国際オリンピック委員会（IOC）が公式には「予定通りの開催を目指す」と強調する東京大会はあと126日と迫る。

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無観客で開催　聖火到着式

聖火到着式で披露された「ブルーインパルス」の展示飛行(3月20日、宮城県東松島市)=魚眼レンズ使用

新型コロナウイルスの感染拡大で東京五輪の開催が懸念される中、ギリシャのオリンピアで採火された聖火が20日、航空自衛隊松島基地（宮城県東松島市）に到着した。到着式では地元の子どもたち約200人が聖火を出迎える予定だったが、新型ウイルスの感染拡大を避けるために取りやめ、大会組織委員会などの関係者のみの出席とした。聖火リレーは26日に始まり、全国を巡る予定だ。

静寂の土俵 大相撲春場所

取組前に塩をまく白鵬(3月8日、大阪市浪速区のエディオンアリーナ大阪)

取組中の歓声もなければ勝負後の拍手もない。史上初の無観客開催となった大相撲春場所。会場のエディオンアリーナ大阪（大阪市浪速区）は、異様な静寂に包まれていた。行司や呼出しの声は際立ち、立ち合いで肉体がぶつかる音は広い場内に響き渡る。通常なら写真記者は砂かぶりに陣取れるが、今回は感染拡大防止のため2階席からの取材に。それでも力士のかすかな息づかいが聞こえてくるほどだ。日本相撲協会の八角理事長（元横綱北勝海）は初日のあいさつで、「四股は邪悪なものを大地に押し込めると信じられてきた」と述べた。

チケット売り場も間隔確保　プロ野球

プロ野球・広島の観戦チケットを求めて並ぶ人たち(3月7日、広島市のマツダスタジアム)

開幕戦延期を決めたプロ野球では、チケット売り場に工夫をこらした。広島の本拠地、マツダスタジアムでは購入希望者同士の"濃厚接触"を避けるため、売り場の前に直径1.8メートルの円形カーペットを15枚敷設。中心に立つと一定の間隔をおいて整列できるようにした。昨シーズン、多くの試合に行った男性会社員（40）は「いい対策だと思う。みなルールを守って並んでいる」と4月の阪神戦のチケットを手に笑顔を見せた。一方、無観客試合となり、オープン戦チケットを払い戻しに訪れた20歳代の女性は、その足で6月以降のチケットを購入。「きょうのような払い戻しの手間を考えると、少し先のほうがいいかなと思って」と一緒に訪れた友人との観戦を心待ちにしている様子だった。

選手も感染　欧州サッカー・NBA

ドイツで開催された欧州リーグの無観客試合(3月12日)=ロイター

急速な感染拡大が続く欧州では、サッカーのイングランド・プレミアリーグやイタリア1部リーグで選手の陽性反応が判明。各国リーグや欧州チャンピオンズリーグが試合開催を見合わせ、6～7月に予定されていた欧州選手権や南米選手権も1年延期した。スポーツ大国・米国では、プロバスケットボールNBAが選手の感染で、12日からシーズンを中断。26日に開幕予定だった大リーグも少なくとも2週間延期すると発表した。米経済誌フォーブス（電子版）は、主要なスポーツがこのまま2カ月開催されない場合、最低でも50億ドル（約5400億円）の損失になると試算している。

選手不在の五輪テスト大会 スポーツクライミング

スポーツクライミングの五輪テスト大会で競技進行を確認するマスク姿のスタッフたち(3月6日、東京都江東区の青海アーバンスポーツパーク)

6、7日に開催されたスポーツクライミングの五輪テスト大会に選手の姿はなかった。本番会場の青海アーバンスポーツパーク（東京・江東）に集まったのは競技進行を確認する大会運営スタッフたち。参加予定だった選手の名前が会場にアナウンスされると、クライミング経験があるスタッフが選手役として登場。壁を登り、タイムを表示する機器が正常に作動するかや入退場時の動線などをそれぞれの担当者が入念にチェックしていた。会場には海外への渡航歴、発熱を確認するチェックシートやアルコール消毒液が置かれ、関係者の多くがマスク姿だった。

五輪「予定通り開催」は…

聖火到着式の後、「復興の火」として展示される東京五輪の聖火(3月20日、宮城県石巻市)

五輪開幕日は刻々と迫る(3月20日、東京都港区)

東京五輪の予選を兼ねる体操やカヌーなどの大会が相次いで中止になり、各国の選手や指導者からは「予定通りの開催」を強調するIOCに批判もあがる。安倍晋三首相が「完全な形での開催」と意気込むなか、バッハ会長は19日に米ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで「違うシナリオは検討している」と述べ、これまでの発言とトーンを変え始めた。126日後に迫る東京大会は果たして予定通り開幕できるのか――。新型コロナウイルスの死者数が1万人を超え、不安が増すなかで世界は注視している。

（横沢太郎、浦田晃之介、小幡真帆、柏原敬樹）

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March 20, 2020 at 05:04PM
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